職場で「最近、あの社員の勤務態度が悪くなってきた」と感じたとき、その背景に精神疾患がある可能性があるとしたら、どのように対応すればよいのでしょうか?企業の人事担当者や上司にとって、非常にデリケートで難しい問題ですが、適切な知識と対応を知ることが重要です。
この記事では、精神疾患によって勤務態度が悪化した社員への対応について、法的・実務的な観点からわかりやすく解説します。
〇勤務態度が精神疾患によるものであっても、適切な対応が求められる
結論から言えば、精神疾患が原因で勤務態度が悪化している場合であっても、単純に懲戒処分や解雇などに踏み切るのではなく、企業側には「合理的配慮」や「安全配慮義務」に基づく適切な対応が求められます。
精神疾患は外見ではわかりにくく、本人も自覚していないことがあります。そのため、まずは本人との面談を通じて状況を把握し、必要に応じて産業医や専門機関と連携しながら対応を進めることが大切です。
〇なぜこのような配慮が必要なのか
労働契約法第5条では、使用者(企業)は労働者の安全に配慮する義務があるとされています。精神疾患も身体の病気と同様に「健康問題」であるため、単に勤務態度が悪いという表面的な理由だけで処分を進めると、「不当解雇」や「ハラスメント」として訴えられるリスクがあります。
また、障害者差別解消法や労働施策総合推進法においても、精神疾患を含む障害のある社員に対しては、過度な負担にならない範囲での「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。
勤務態度の悪化として現れやすい具体例としては、
遅刻や欠勤が増える
指示への反応が遅くなる
職場でのコミュニケーションが減る
があり、これらの背景にうつ病や不安障害、適応障害などが潜んでいる可能性があります。
〇よくある誤解 甘やかしてはいけない、という考え
「精神疾患を理由に勤務態度が悪くなったとしても、業務はこなすべきだ」という意見もありますが、これは誤解です。確かに業務遂行能力の低下が著しい場合には配置転換や休職も検討されますが、まずは「業務上の支障」と「健康状態」との因果関係を慎重に見極める必要があります。
精神疾患に対する理解が乏しいと、「サボっている」「やる気がない」と誤認しがちですが、それが原因で二次的なトラブルやハラスメント問題に発展するケースも少なくありません。
〇実務での注意点と対応のステップ
実際の対応としては、以下のようなステップが有効です。
1 本人との定期的な面談を行い、体調や勤務状況についてヒアリング
2 必要に応じて産業医やカウンセラーと連携し、医学的な評価を受ける
3 休職や時短勤務、業務軽減などの配慮を検討する
4 状況が改善されない場合には、労務管理上の措置(配置転換、休職命令等)を慎重に検討
5 最終的に退職や解雇を検討する場合も、客観的な証拠や手続の妥当性が必要
このように段階を踏んで対応することが、企業としてのリスク回避にもつながります。
〇専門家による支援の活用
このようなケースでは、社労士(社会保険労務士)や産業医、メンタルヘルスの専門家などの支援が非常に有効です。社労士は就業規則や休職制度の整備、労務トラブルの未然防止策を助言できます。
また、産業医は社員の健康状態を医学的に評価し、業務遂行可否の判断や職場復帰支援などを行います。場合によっては行政書士が、本人の意向や診断書の確認を踏まえて公的制度(障害年金や労災申請など)の支援を行うこともあります。
〇まとめ
精神疾患による勤務態度の変化に気づいたら、放置せずに早めの対応が重要です。本人の体調を尊重しながらも、職場全体への影響を考慮し、バランスの取れた対応を目指しましょう。
制度の整備や専門家の活用により、精神疾患を抱える社員が安心して働ける環境づくりが、企業の健全な成長にもつながります。もし対応に迷う場合は、専門家への相談をおすすめします。
