無断欠勤が続く社員に即時解雇はできる?正当な手続きと注意点を解説

無断欠勤が続く社員に対して「もう来なくていい」と感情的に対応したくなることは、経営者や人事担当者であれば誰しも一度は経験があるかもしれません。しかし、即時解雇は労働法上のハードルが高く、正しい手続きを踏まなければ後に労働紛争に発展する恐れがあります。本記事では、無断欠勤が続く社員に対して即時解雇が可能かどうか、またその際に必要な対応や注意点について詳しく解説します。

〇結論:即時解雇は可能だが、厳格な条件と手続きが必要

無断欠勤が一定期間継続し、業務に重大な支障をきたしている場合、就業規則や労働契約に基づき「懲戒解雇」や「普通解雇」が可能です。ただし、即時解雇(懲戒解雇)の場合は、正当な理由と証拠、そして適切な手続きを経て初めて有効とされます。単に数日間の無断欠勤があったという理由だけで即時解雇するのは、非常にリスクが高い対応です。

〇解説:就業規則と労働契約に基づく対応が基本

労働契約法第16条によると、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。無断欠勤に対して即時解雇を行うには、以下のような条件が求められます。

– 無断欠勤が14日以上継続するなど、長期かつ悪質である

– 出勤命令や注意喚起をしても応じず、連絡も取れない

– 就業規則に「無断欠勤が一定期間続いた場合は懲戒解雇の対象とする」と明記されている

これらの条件を満たして初めて、懲戒解雇が「合理的かつ相当」と判断されやすくなります。

また、懲戒解雇には「事前の本人への弁明の機会」が必要であり、本人と連絡が取れない場合でも、内容証明郵便などで出席要請を送るなどの努力が求められます。

〇よくある誤解:数日の欠勤や連絡なしですぐに解雇できる?

よくある誤解として、「3日間無断で休んだから即解雇してもよい」と考えるケースがあります。しかし、解雇は最終手段であり、労働者の事情(病気や事故など)を確認せずに処分を下すのは不当解雇とされる可能性があります。連絡が取れない場合でも、まずは安否確認や本人の状況把握を試みる必要があります。

また、就業規則に定めがないまま懲戒解雇を行うことも、法的に無効とされる恐れがあります。あらかじめ社内ルールを整備しておくことが非常に重要です。

〇実務での注意点:記録と証拠を残し、段階的な対応を

実際の現場では、感情的な対応や場当たり的な処分がトラブルの火種になりがちです。以下のような対応を心がけましょう。

– 欠勤初日から連絡履歴を記録する

– 内容証明で出勤命令や事情説明の要請を送付する

– 本人が出勤しない理由を明確に確認できる手段を講じる

– 懲戒委員会の開催や議事録の作成など、客観的手続きを取る

また、普通解雇と懲戒解雇のどちらを選ぶか、会社のリスクを考慮して慎重に判断すべきです。懲戒解雇は労働者の再就職に不利となるため、訴訟リスクも高くなります。

〇士業としての支援内容:社労士や弁護士の活用を

このようなケースでは、社会保険労務士(社労士)や労働問題に詳しい弁護士のサポートが非常に有効です。社労士は以下のような支援を提供できます:

– 就業規則の整備と懲戒規定の見直し

– 解雇手続きの書類作成(出勤命令書、懲戒通知書など)

– 社内の労務対応に関するアドバイスや調整

弁護士は、解雇の法的有効性についての見解や、労働審判・訴訟への対応を担います。トラブルに発展する前に、専門家に相談することが望ましいです。

〇まとめ:即時解雇は慎重に、証拠と手続きがカギ

無断欠勤が続く社員への対応は、企業にとって大きなストレスとなります。しかし、感情的な判断ではなく、法的根拠に基づいた冷静な対応が求められます。就業規則の整備、証拠の確保、専門家の活用が、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。

「即時解雇できるかどうか」で悩んだ場合は、まずは社労士や弁護士に相談し、適切な対応方針を立てることをおすすめします。