就業規則がないと問題社員に対応できない?会社を守るために必要なルールの重要性

従業員が増えるとともに「問題社員」への対応に悩む経営者や管理職は少なくありません。特に中小企業では「うちには就業規則がないけど大丈夫?」という不安の声も多く聞かれます。では、実際に就業規則がない場合、問題社員に対して適切な処分や指導はできないのでしょうか?この記事では、就業規則の有無が労務管理に与える影響や実務上の注意点について詳しく解説します。

〇問題社員に対応するためには就業規則が必要

結論から言えば、「就業規則がなければ問題社員に対して適切な懲戒処分や規律指導を行うことは非常に難しくなる」と言えます。労働契約や社内ルールの基盤となる就業規則がなければ、社員に対するペナルティの正当性を証明することが困難だからです。

例えば、無断欠勤やハラスメント行為、業務命令違反などがあった場合、就業規則があれば「どのような行為が禁止されているか」「違反時にはどんな処分があるか」が明文化されています。しかし、就業規則がないと「どこまでが容認されるか」「どう処分するか」が曖昧になり、後のトラブルや訴訟リスクにつながりかねません。

〇なぜ就業規則が重要なのか

就業規則は、労働基準法第89条により「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に作成・届出が義務付けられていますが、10人未満であっても就業規則を整備しておくことには大きなメリットがあります。

まず、就業規則は会社のルールブックであり、労使間のトラブルを予防する役割を果たします。懲戒処分や服務規律、労働時間、休暇制度などを明文化することで、従業員に対して公平な運用が可能になり、説明責任も果たせます。

さらに、裁判や労働審判の場面でも「就業規則に基づく対応である」と説明できれば、企業側の正当性が認められやすくなります。

〇よくある誤解

「就業規則がなくても労働契約書があるから大丈夫」という誤解も多いですが、契約書だけでは対応に限界があります。労働契約書には最低限の労働条件しか記載されていないため、懲戒処分の種類や手続き、服務規律の細かな内容まではカバーしきれません。

また、「問題が起きたらその都度話し合えばいい」という考え方も危険です。就業規則がなければ、会社の一貫性ある対応ができず、社員から「不当な扱いだ」と主張されるリスクが高くなります。

〇実務での注意点

就業規則を作成する際には、内容が労働基準法などの法律に適合していることが大前提です。不利益変更や懲戒処分の内容には慎重な検討が必要であり、従業員への周知手続きも必須です。

また、「作っただけで運用していない」「社員が中身を知らない」といった状況も少なくありません。就業規則は実際の運用と一体で初めて意味を持ちます。更新や見直しも定期的に行うことが求められます。

〇専門家による支援で安心の運用を

就業規則の作成や改定、トラブル時の対応にあたっては、社会保険労務士(社労士)など労務管理の専門家に相談することが有効です。特に問題社員への懲戒処分を検討する場合、法的リスクを最小限に抑えた対応が求められるため、専門家のアドバイスは欠かせません。

社労士は、就業規則の法的整合性の確認、従業員への説明、社内運用のサポートなどを通じて、会社を守る仕組みづくりを支援します。

〇まとめ:就業規則は企業の防衛策

問題社員への対応を適正に行うには、会社としてのルールを明確に定めておくことが不可欠です。就業規則がないと、処分の根拠が曖昧となり、かえってトラブルを招く恐れがあります。従業員数に関わらず、事業の安定と法的リスクの軽減のためにも、早めに就業規則を整備し、社内にしっかり周知・運用していくことを強くおすすめします。